3 そりゃそうだ
広い部屋だった。
入って正面には大きなスクリーンがあり、ベッドが複数設置されていた。
鹿之介とフィーナはベッドに寝ると、軽くベルトで固定される。
「こりゃ何だ。拷問か!?」
鹿之介の問いにポリンは笑顔で答える。
「まずは貴方達に反乱の志があるか、検査をしてモニターで確認するわ。
あと、もう一つ興味深い事があるの。貴方達の遺伝子は共通の記憶を持っているわ。それを見てみるの」
「俺と…」
鹿之介が顔を向けるとフィーナと眼が合った。
「遠い先祖がどこかで知り合っていたのでしょうか……」
そんな事があるのだろうか。
見た目から文化も違う。そもそも民族が違う。古い時代になればなるほど共通の記憶など持てる筈がない。
考えると鹿之介は胸が熱くなった。この戦争で知り合った女性に意識をする。
思えば艦は違えど、キャッスルメイン星団の戦いから生還した戦友であるし、そしてお互いが連絡を取り合ったことも無いのに、地上で再会して行動を共にしている。
何かあってもおかしくはないのだろうか。
太陽系から出撃する際の会議室で見た顔、食堂で見た沈みきった顔、暴れた直後に見せた笑顔、故郷を思い出した涙。
胸を締め付けられる、ともすれば懐かしさすらある感覚。鹿之介は首を振った。
そのような感情は捨てたはずだ、もう随分と昔に。何を今になって…。
彼女にその感情を持ってはいけない。いけないんだ…。しかし…。
天井から板状の設備が降りてきて、目の前で止まる。上半身に被さるように固定されたものが低い振動音を放つと、二人はそのまま気を失った。
目が覚める。
何か変わった事があっただろうか。
身を起こすと、すでにフィーナも起き上がっていた。
ポリンの声が聞こえる。
「ごめんなさいね。共通の記憶を持つのは鹿之介じゃなくて達哉ね。紛らわしい名前にしないでくれるかしら」
さすがの鹿之介も腹が立った。
「そんな事だろうと思ったよ!しかし、どうやったらシカノスケとタツヤを間違えるんだよ!」
「本名を書いたらいけないでしょ?」
さも楽しそうに笑うポリンにフィーナも吊られて笑う。
顔を真っ赤にして怒った鹿之介はベルトを地面に叩きつけた。
まるで心の中まで見透かされてしまったのを恥じるように。
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